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新規プロジェクト HIV感染予防・エイズケアプロジェクト
ルンタ・プロジェクトは2006年10月より、新規プロジェクトとしてチベット成人難民を対象としたHIV感染予防・エイズケアプロジェクトを始めました。エイズはチベット難民社会で静かに蔓延しつつあります。チベット難民社会全体におけるHIV感染者数は公表されていませんが、2006年に行われた20代の若者45人を対象としたHIV抗体検査の結果は、45人中2人が感染していたという深刻なものでした(注1)。
インドにて亡命生活を営むチベット難民は季節労働に従事する割合が多いため、HIV感染の危険が高いグループ(high risk group)に分類されます。チベット難民社会における就業形態は、ほぼインフォーマルセクター(注2)で占められ、全体の70%がインフォーマルセクターに就業することで収入を得ています。そのうち92%がセーター等を売る「露天商」や「季節労働者」としてインドの都市部へ定期的な出稼ぎを行っています(注3)。毎年秋になるとチベット人たちは、家族を残して町を離れ、都市部で約5ヶ月間行商を営みます。家族と離れて都市部に住むことで、買春に関わる可能性が高くなり、その結果HIV感染リスクも高まっていると推測されます(注4)。UNAIDS(2006)の統計によると、インドの感染者総数は世界で三番目に多く、250万人を超え、一日約1,600人が新たに感染していると見積もられています。感染者のうち、約85%が性感染を通してHIVに感染しており、また、都市によっては性産業に従事する女性の約60%がHIV陽性であるという統計もあります(注5)。
また、チベット難民の若者間でのドラッグの蔓延もHIV感染のリスクを高める要因になっています。失業率の高さは、チベット難民社会が抱える大きな課題のひとつですが、チベット亡命政府の財政規模の小ささに加え(注6)、地場産業や工業が発展しなかったこと、インド社会での就職が困難なこと等の理由により、失業率は少なく見積もっても7.7%になるといわれています。難民居住区によっては15.6%(オリッサ州プンツォックリン)にも及ぶ地域もあります(注7)。高い失業率がもたらす閉塞感、フラストレーションは若者の間でよくみられ、ドラッグが蔓延する一因となっていると考えられます。
これらの高いリスク要因にもかかわらず、チベット亡命政府のHIVエイズ対策への取り組みは遅れていると言わざるを得ません。厚生省にはこれまでHIVエイズ研修を受けたスタッフは一人もなく、エイズ問題に対応できる人材が不足しています。またエイズ感染者への支援団体もなく、カウンセリング等のメンタルケアサービスも一切行われていません。また、難民学校では性教育やエイズ教育を受ける機会がないため、次世代へのHIVエイズ予防対策も遅れています。
これらの状況を踏まえ、ルンタプロジェクトは予防からケアまでを含む総合的なHIVエイズ予防プログラムがチベット亡命社会に必要であると考え、以下のニーズアセスメントや感染予防、感染者ケアのプロジェクトを企画・実施しています。
(注1) Department of Home, TGiE
(注2) ILOの定義によるとインフォーマルセクターとは「労働期間が不定期であるため、収入が安定せず、また被雇用者として雇用主と雇用契約を結ぶことがないため法的な保護を受けられない自営業者及び日雇い労働者」と規定されている。ILO. (2002).
(注3) Central Tibetan Administration, Planning Commission. (2004). Tibetan Community
in Exile: Demographic and Socio-Economic Issues 1998-2001. Dharamsala,
India. P.19.
(注4) Migration for work, seasonal labor and professions such as truck-driving
can separate men from their spouses or regular partners for long periods,
increasing the likelihood of entering into casual, unprotected sex, including
relationships with sex workers (UNAIDS. 2006, HIV/AIDS and Gender: Facts
sheets).
プロジェクト概要
1.
上位目標
チベット難民居住区にて、HIV感染者数が減少する。
チベット難民居住区にて、HIV感染者への治療及びケアの質が高まる。
2.
プロジェクト目標
チベット難民を対象としたHIV感染予防対策・エイズケア対策が、亡命政府、NGO、コミュニティグループ等からなるマルチセクター内の横断的ネットワークを通して、持続可能な形で実施される。
3.
活動内容
1. アセスメント
2. HIV感染予防プロジェクト
3.HIV感染者・エイズ患者ケアプロジェクト
4.
プロジェクト進捗状況(2007年12月)
2007年3月に予定されていたHIV専門家養成のための研修は、プロジェクトスタッフ2名及び現地協力団体の担当者5名(医師2名、看護師1名、ソーシャルワーカー2名)の計7名の参加のもと、無事に終えることができました。3週間の研修は、デリーのNGO団体SAHARAにて、二週間の集中講義と一週間の実習を通して行われました。SAHARAは、デリーを中心にエイズ患者のためのホスピスやクリニックを運営する団体であり、その活動は売春地域でのコンドーム使用促進、麻薬常用者のための注射針交換、スラムでのHIV感染予防啓蒙、HIV感染者たちへの職業訓練等多岐に渡ります。
今回の研修の内容はHIVに関して基礎から学べるように構成されており、HIV感染予防、STD(性感染症)等の基礎知識の説明から、カウンセリングのノウハウやHIV感染予防ワークショップの内容や組み立て方についても講義が行われました。研修は、ロールプレイやデモンストレーションを多く含んだ実用的な内容であり、また麻薬常用者への対策といった感染リスクの高いグループへの取り組み方についても学ぶことができました。一週間の実習はSAHARAが運営するホスピスで行われ、結核等の日和見感染症対策やART投薬といった専門知識やエイズ患者のターミナルケアについて精神的ケアも含めた実務的な知識を得ることができました。
研修終了後、研修参加者が中心となってHIV感染予防ワークショップの企画・開催が行われ、2007年12月までに19ヶ所の学校や難民キャンプにてワークショップが開かれました。ワークショップはダラムサラのみではなく、デリーや南インドのバンガロール、またウッタランチャル州やタミールナドゥ州のチベット難民キャンプにおいても開催されました。また、ラジオやケーブルテレビといったメディアを通してのHIV感染予防の啓蒙活動も積極的に行われました。
また、ニーズアセスメントのために、8月から11月に渡って成人難民を対象としたHIV感染リスク度を計るアンケート調査(無記名・50問)が実施され、220件の回答を回収することができました。
ルンタプロジェクトは、この新規プロジェクトが持続可能なものとなり、より大きな効果を得るためにも、チベット人の自主的かつ積極的な参加が不可欠であると思っています。そのためには、チベット人たちを主体としたプロジェクト組織を形成する必要があると考え、NGOとしてインド政府に現在登録申請中です。組織はCHOICEと命名され、HIV研修を受けた医師・看護師たちが中心メンバーとなり、11人のチベット人たちから構成されています。代表理事に元福祉事務所所長・亡命政府議員のダワ・ツェリン氏に迎え、2008年からはチベット人たちが中心となりプロジェクトを進めていくことになっています。
CHOICEのサイトへ(英語のみ)
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